想像していた最悪の事態が現実に…
(いままでで一番嬉しかったかも…こと)
嶋田康幸

 「いやー、引きの強い人っているもんだなー」
 2月10日収録の朝、里谷選手の銅メダルを見て思った。

 今回は、初めてのチーム戦。迷惑だけはかけたくなかった。いつもより事前の勉強に気合が入る。当日10:30集合だったが少し早めに集合し、東陽町の放送センターへ到着。運転免許センターには何度か行ったがそのすぐ近くとは今まで知らなかった。うれしかったのは局が衣装を用意してくれたこと。いろんな色があったら"赤"を選ぶつもりだったが全員分"赤"だった。
 11:00。50問の予選ペーパーがスタート。前半の25問がかなり難しい。まったく想像のつかない問題や「何だったかな〜コレ」というような問題が多く苦戦。後半の25問はそれなりだった。実はコレ、未放送分の問題で、後でわかったのだが難しい問題は、早押し用に作成されたものだった。
 控え室での作戦会議、昼食を終え12:30にスタジオ入り。仲間と一緒のせいか、いつもより緊張感が少ない。テレビのスタッフというとボロボロのジーンズにトレーナー、ウエストポーチにガムテープといったイメージなのだが、この番組のスタッフはほぼ全員スーツなのだ。聞いたところによるとカジノっぽい雰囲気を出すためにこうしてるのだとか。

<収録中>
○1回戦
 最初は午前中の予選ペーパーの順位発表から。精神的に優位に立つためにも1位を取りたかった。結果は堂々の1位。そして、いつもはやらない大きなガッツポーズ。「自分ではリアクションが大きくて恥ずかしいと思ってもテレビになると、それぐらいがちょうどいいんだよね」とアタック25のスタッフに言われて以来、テレビの時はちょっとリアクション大きめにしているのです。(でもここは放送ではカット)
 1回戦、いきなりパーフェクトが出て驚いたが、鷹羽さんが出るのでかなり安心して見ていられた。1回戦は余裕があったのでモニターばかり見ていた。「横から撮られるとアゴのぜい肉が目立つな〜」とかそんなことばかり気にしていた。それから石野さんの1ショットが多いのなんのって…。さすがゴールデンタイムの番組、カメラの台数が多い。

○準決勝
 序盤どうも押し負けが多い。相手チームもポイントを相当前に出して押してくる。「おい、まだポイントじゃないぞ!そんなところで押すな!」と心の中で思う。そして調子が出ないまま、相手チームがドンドン抜けていく。残るは香川とウチ。1対2。水野さんと俺だけになる。寂しいぞー。水野さんの「イタリア!」でとうとう1対1。想像していた最悪の事態が現実となった。
 不慣れな映像クイズ。選択肢で押してはいけないのはわかっていたのだが、アメリカの紙幣の問題でワシントンが出たため条件反射で押してしまった。
 そして渾身の「1ドル紙幣!」……ブー。
 負けた…なんせ答え言っちゃってるんだから俺。
 しかし奇跡が起こった。「俺って里谷選手じゃないけど引き強いねー。相変わらず」。
 次の問題、ドリカムの曲がかかった。
 「ヤバイ、この歌なんだっけ。あー曲名が思い出せない〜ヤベー」なんて思っていたら、思い出しましたよ。ブレーキランプの回数がなんかの言葉なんだよな〜、この歌から問題作れるのはこの部分しかなかったはず、と思っているとそのものズバリの問題。「よし!もらった!5文字の言葉だったよな〜、えーと"さようなら"だったかな?ん?なんかチョット違うな、なんだったけ〜あ〜…」
 「あ・い・し・て・る!」10年ぐらい前の記憶がやっと出てきた。この時は素で大きなガッツポーズ。やった、やった、やりましたよ、皆さん。勝ちましたよ。中山さんにコメントを求められたが興奮しすぎていたため気の利いたコメントを言えなかったのが心残り。カメラが一旦止まった後、メチャクチャ胃が痛くなった。
 率直な感想「もう、こんな思いはしたくない」。

○決勝
 こちらは石野さん投入。負けはないと思っていた。というか石野さんが負ける姿をほとんど見たことがなかったので想像できなかった。そして問題が始まる。ん?なんか難しい問題多いぞ。と思っていたが、10問正解。微妙だが、今の問題のレベルで11問はかなりキツイはずなので、なんとかなるとは思っていた。
 結果は同点。「また、早押しかよー」。
 水野さんが抜け4対4。また曲がかかる。「聖母たちのララバイ」だ。今度は曲名もわかるぞ。なんか古い歌多いな〜。なんて思っていると相手の誤答。解答権が移ってくる。準決勝のような思いはしたくないのと、この問題を答えないと、もうわかる問題が来ないような気がした。「くちびる!」今度は余裕の正解。あとは3人を待つだけ。その後、「あの夏一番静かな海」西沢さん得意の映画問題、「コンサドーレ札幌」鷹羽さんの郷里問題。まあ、答えるべき人が答える。やっぱりウチのチームは「引きが強い」。残るは、石野さん「…ディープブルー」と聞いた瞬間、「石野さんが知らないわけがないな、ランプが点いたら決まり」と思った直後、優勝が決まった。

○ファイナルタイムショック
 ここまでくると金額はどうでもよかった。パーフェクトか否かだけだ。結果はパーフェクトにはならなかったものの、このシーンに立ち会えてうれしかった。

○収録後
 終了後、控え室に構成作家の方(スイマセンお名前を聞かなかったもので)がお見えになり、随分熱心にクイズ界の取材をしていた。番組をどういう風に盛り上げるかというのを真剣にお考えのようで、我々も一助になればと思い、随分話し込んでしまった。
 帰宅すると、プレッシャーから開放されたのが原因かどうかはわからないが、熱を出してしまった。

 いろんな意味で貴重な体験をさせてもらった。チームのメンバーや番組のスタッフには本当に感謝しております。ありがとうございます。