勝利の女神は気まぐれなもの
(実はアップダウンクイズの子供大会で石野まゆみと対戦している)
鷹羽 寛

 「ホノルルだけに、衣装はやっぱりアロハとかですかね」
 予選のとき、最初にそう言ったのは自分だったような気がする。控室で着替えながらそんなことを考えていた。
 2月10日、天候・曇。正午頃には一時雪さえちらついていた。服装としては、季節外れも甚だしい。スタッフから手渡されたアロハ(石野さんはムームー)を見て、ちょっと派手すぎないか?とも思ったが、全員そろってみるとまんざらでもない。不思議なもので、連帯感のようなものも醸し出された気がする。こんなんもアリかも、そう思った。水野さんは自前で購入したというウクレレを抱え、石野さんは、これまた自前の花飾りをつけている。こうして、「ホノルルチームご一行様」のできあがり。さあ、本番だ。
 リハーサル室のようなところで、一回戦の順番決めを兼ねたペーパー開始。ここで今回の出場者がはじめて一堂に会する。福岡チームは、風の噂で対戦するらしいと聞いていた。ホークスの法被も勇ましい。結婚失業チームの「新郎」こと辰巳氏は、@ニフティのクイズフォーラムのオフでお会いしたことがある。香川チームは存じ上げた方はおられなかったが、何やらただならぬオーラを発している。要注意。
 問題が予選会のときより格段に難しくなってる、と思ったらどうやら「大学クイ研大会」の問題だったらしい。ペーパーではなるべく空欄は作らない主義だが、分からないのが多い。ずいぶん落としたな、というのが正直な感想。個人得点は、結局聞けずじまいだった。オンエアでは流れるのかな?と思っていたら、一切言及なし。うーん、気になる。
 昼食も終わり、スタジオへ移動。控室はスタジオとは別棟になっていて、出場者は当然ながら「本番の衣装」で移動。もちろん外を通って。移動のときは上着着用が許されたが、やっぱり寒い…。本番が始まれば、きっとイヤでも暑くなるんだろうけど。実際、この後、寒さも暑さも吹っ飛ぶような展開になろうとは、この時知る由もなかった…。 

 本番は、椅子セットの前に整列するところからスタート。先ほど受けたペーパーの合計得点順にチーム名が呼ばれる(ここは放送されなかった)。1位を確保できたことでまずは一安心。すでにトップバッターで行くことが決まっていた自分としても、他の3チームを見てから臨めるので気持ち的に楽…と考えていたら、最初の香川チーム(齋藤君)がいきなりのパーフェクト。これはもう天晴れの一言。聞けば広島大学出身とのこと。ということはもみじQ楽部?と思って後でGoogleで検索をかけたら、やはり掲示板にその形跡が。なるほど。プレッシャーに耐えて結果を出した解答ぶりには、素直に感動。と同時に、「今日は何が起こってもおかしくない」というイヤな予感が頭をよぎったのも確か。私は無事にやり遂げることが出来るのか?
 パーフェクトの余韻を残しつつ、他の2チームも終わっていよいよ自分の出番。7問取ればとにかく次へ駒を進められることは分かっていたので、ここは焦らず、平常心を保つこと。とはいえ中山氏とのトークをまったく覚えていない事からすると、やはり結構あがっていたのだと思う。その精神状態からすれば、10問という結果は上出来の部類ではないかと…。ただ、どうせならもう1問は取っておきたかった。「ATS」は単純な言い間違い。国立公園は、覚えようとしたことが一度もないので間違っても当然か。「2つ」か「3つ」の2択だったんだけど。
 実は、準決勝がいちばんの「難所」になるだろうとは事前に予期していた。形式が早押しになることを事前に聞いていたからだ。ホノルルも指の速さでは決してよそに引けを取らないとは思うが、経験則から言って「指」は地方に行くほど速い。短期決戦で、しかも誤答のペナルティが緩いルールだと、さし切られる可能性はじゅうぶんにある。先の見えないまま、ゲーム開始。さて…。
 始まってみると、予想通りのスピード戦。なかなかボタンがつかない。控室で見ていた水野夫人があとで「かなり押し負けていた」と。やっぱり?こりゃ大変だ、と内心焦りだす。ホノルルではまず西沢さんが抜け、次に押したのは私。「負けないで」は妻のカラオケ十八番。ふつうに押して、ふつうに答えてしまった。問題文もよく出来ていたし(歌詞が分かっていても「検索」に時間がかかるよう、語順をオリジナルと逆にしてある)、ちょっと快感。ただ、ここで抜けたのが良かったのかどうか…?
 ホノルルチームは、その後も誤答を出すなど苦戦。そうこうしているうち、福岡が先に抜け、香川も残り1人。ホノルルも追い上げ、嶋田君と香川の1対1。相手の力量は未知数だが、嶋田君は仮にもアタック年間戦の覇者。余程のことがないかぎり負けることはないだろう、と思っていたら…起こるもんなんですね、余程のことって。慣れない画像問題に焦ったのか、ほぼ正解を教えたのと同義の誤答をして、相手に解答権。万事休す、というより実質的にウチはあそこで負けていた。あのとき一瞬でも、香川に「風」が吹いていれば…。ただ、あそこでピンチを脱したことで、流れは一気にこちらに傾いたと思う。そして次。ドリカムの名曲「未来予想図II」のキーとなる歌詞。ここを嶋田君がきっちりおさえ、ホノルルは辛くも決勝進出を果たした。香川チームとはここでお別れ。これまで面識はなかったが、すばらしい健闘を見せられ、こちらも居ずまいを正される心持ちがした。またどこかでお会いしましょう、香川の皆さん。そのときは…負けるかも?とにかく、彼らのためにも恥ずかしくない戦いをしよう、と思った。
 
 そして決勝。こちらはもちろん石野さんを投入、むこうは勝ちに行くために最大の得点源である川渕氏を出してくる。ふたりの決勝なら…同点になるんじゃないか、という漠然とした予感はあった。そもそも、ここ最近のタイムショックで同様のシチュエーションになったとき、一発で勝負がつくことの方が稀だった。そうなったとき、勝負はどうなる?先ほどは押し負けで苦戦を強いられた。とにかくリズムに乗せては駄目だ。かといって誤答は絶対に避けなければならない。こういう勝負ではひとつの誤答が命取りになる…。そんなことを考えながら、ふたりのタイムショックを眺めていた。結果は?10問同点。やっぱり(^^; さあ、もう一頑張り。
 福岡チームの誤答を2問拾った時点で、ほぼ勝負はついていた。でも、これも勝負の綾で、この2問を正解されていれば恐らくこちらの負けだったろうと思う。気がつけば向こうが4人、こちらが私と石野さんの2人。そして問題「監督が岡田から柱谷に…」それはたしか、北海道新聞のウェブページで読んだ。「コンサドーレ札幌!」ピンポン。あとは石野さんにお任せ。圧倒的有利とはいえ、向こうも百戦錬磨のプレーヤー。このまま引き下がるとも思えない。どうなる?迎えた次の問題「人間対ディープ・ブルー…」ここでボタンがつくのが石野さんの勝負強いところ。「チェス!」この解答で優勝決定。勝敗というのは、決まるときにはあっけなく決まるものだ、と思った。それにしても、全体を通してみればそれぞれに山あり谷あり、見せ場もあれば、課題も残る、そんな戦いだったと思う。福岡チームに別れを告げ、あとはファイナルを残すのみ。
 賞金をかけた椅子に座るのは、もちろん石野さん。階段を登り、着席。あとに係員が続いて登って、その場で保護具装着(テレビを観ていて、ここでの装着はいっぺん椅子を下ろしてするものと何となく思っていたのだが、違うんですよ、皆さん)。もうあとは、我々にできるのは声援と「念」を送ることだけ。頑張れ!
 結果は、またも10問。考えてみれば、今回合計7セット行われた「椅子問題」で、正解数1ケタだったのは1度だけ、あとは全部10問以上という結果。いやはや、大変でした。優勝ボーナスと合わせて、ちょうどひとり100万。おあとがよろしいようで…。でも石野さんは納得いかない模様。石野さんのパーフェクト、私も見たかったのですが。それはまた、「次」の機会ということで。

 収録終了後、放送作家の方や女性スタッフから、いろいろなお話を聞かせてもらった。交通費をいただき、賞金の振込先を伝えて、ひとまず終了。テレ朝をあとにした。その足で向かった、水野夫人が来る途中見つけたというステーキハウスで、ささやかな祝勝会。そこでいちばん笑ったのは、嶋田君の一言。「準決勝で僕が答えたあの曲、何ていう曲なんですか?」それでも、勝つときは勝つ。勝利の女神は気まぐれなものである。
 ひとしきり食べかつ飲んだあと、流れで解散。私は最終的に本八幡駅で皆と別れ、そこで待っていた妻と合流、祝勝会第2弾へ突入。とはいえかなり飲んでいたので、アルコールは控えウーロン茶ばかり飲んでいた。帰宅は12時過ぎだったろうか。幸い、収録がちょうど連休の中日で、翌日も休み。ゆっくり疲れを取る…わけにもいかず、たまっていた宿題「会報2月号の編集」で、連休最終日は暮れていったのであった。
 これを書いている時点で、まだ賞金は振り込まれていない。旅行資金はとりあえずキープしておくとして、残りは固定資産税の払いと、最近調子の悪い妻のモバイルギアの買い替え、そして私のサブノートパソコン。あとは生活費の補填…いかん、旅行資金が残らない(汗)。なんとか本業で稼がなければ。でも給料カット中なんだよな…祈・景気回復(涙)。

 最後に蛇足。私は今回、久々のテレビ出演ということでメガネを新調した。前のメガネ、塗装がハゲていたので。でも、収録中そのことに気づいて指摘した人は皆無だった。はじめてそれを指摘したのは、直後のホノルル例会に来ていた春日誠治だった。世の中ってそんなもの?