<ブロッケンの妖怪>


酔って
テレビを見て笑っている
先日 北アルプスヘ登ってきた僕は
もう風呂を洛びてビールを呑んでいる

あれほど苦しかった歩みも 残雪も
満員の地下鉄に消えていった

北アルプスの尾根で燕を見た
頭上でブーメランのように
風を切る音が聞こえた
何の意味も持たない音
地下鉄の発車ベルとは違う

集団の中で緊張する
明日の会議の失敗を恐れる
僕のなかにある小心を否定しながら

青い炎のように分裂する雲と
眼下に見たまんまるな虹

そこに映るはずの背広姿の僕の
光と影の
すぐ消える不安定な妖怪と
僕は酔ってテレビを見ている