< 地平線へ>


改札をでてしばらくすると
背後から僕を呼ぶ声がする
それは幼い僕を捜す母であったり
突然キリンであったりする

ビルの谷間のオフィスで仕事を終え
地下鉄を乗り継いで
ビルの谷間にある家に帰る

僕はそこの普通のサラリーマンだが
僕のなかへ続く草原を僕が思い浮かべたとき
キリンの首が戻ってくる

見上げる鏡のようなビルには
いろんなものが写っていて
青空 コンパス 飛行機
自転車 クレヨン おもちゃ箱

母が僕を呼ぶことはないし
キリンが僕に語りかけてくるわけはない
僕の耳にはキリンのくぐもった声が聞こえている
電車を降りたときまっすぐに伸びたキリンの首が見えた

振り返ってみるが
僕には見知らぬ人が足早に歩いているだけだ
記憶のなかのお母さんですか懐かしい声をだして僕を呼んだのは

見えない地平線をキリンといっしょに
行きたい