<犬と歩く>
「犬を捜しています」
シィーズのオスで首輪がとれています
お心あたりの方
四時以降 九五三−九三〇七番まで
お電話をください
新聞に手書きの折り込み広告が入っていた
夢のなかで
僕とはぐれた犬ではないが
僕の夢を黙ってとおり過ぎた痩せた犬だろうか
僕の胃潰瘍のあたりを
舐めて
何を嗅ぎつけたのだろう
犬は振り向きもせず僕のなかをまっすぐに
行ってしまった
(でも人なつっこい可愛いしぐさで)
僕はその犬の名前を「チロ」と知っていたはずなのに
夢のなかで 僕は僕の名を呼んでいた
どうして夢に
立ち寄ったのだろう
僕のなかでいちばんさみしい道に
公園で飼い主と散歩するシィーズがいる
さだめられた
通勤経路の日溜まりを
僕は毎日不明の犬と歩いている