楽しかったし、チームも勝った。でも…
(「人生の目的が12問正解なんて言ってないぞ」こと)
石野まゆみ

 タイムショック。地上波のクイズ番組(しかもタレント相手でないガチンコの)出場は、'98年大晦日の「20世紀クイズ」以来、久しぶりだなあ。というわけで、本番はメンバーに対する信頼感と、久しぶりの出場に対する若干の不安をもって収録に臨んだ。
 出場にあたって一番の目標が、「チームの勝利」であったことは間違いないが、そのほか、収録前の50問ペーパーで4チーム中トップの成績を収めること、そして、個人的には12問全問正解を出すことを目標に置いていた。
 で、スタジオ入り。タイムショックって、スタジオ内のスタッフの数がとても多い。カメラの数もきわめて多い。あれにはまいった。気を抜くヒマがなかった。収録後、スタジオを出たときの脱力感ったら、もう…。
 それはさておき、第一の目標、「50問ペーパートップ」はあっさりクリア。チームメイトに感謝。しかし、その後の本番はあっと驚く出来事の連続で頭がくらくらするほどだった。いの一番の香川チームのパーフェクトにも驚いたが、準決勝の早押しにも肝を冷やした。
 実のところ、早押しにはやや不安があった。知識量は問題ない我々であったが、瞬発力はいかがなものか…。それが実際、もろに出た。あの早押しを勝ち抜くことができたのは奇跡としか言いようがない。どんなできすぎたドラマでも、あんな露骨な筋書きにはするはずがない。天が我らに味方したと思った。
 あとは私の出番である。椅子に向かうときのセリフは決めていた。賞金のためではないということを強調したかった(ま、賞金は魅力だけど)。パーフェクトを取ることで自己主張しようと本気で思っていた。しかし…。
 第1問の「プルーン」をいとも簡単にはずしてしまった。頭の中にプルーンの絵が浮かんだにもかかわらず、である。スタッフのため息が聞こえた。問題に集中しろよ、おい。それでも不正解のショックを引きずらないのが私の長所。すいすいと正解を重ね、最後の問題。「ルネッサンス」ときいて最初に浮かんだのがカルロス・ゴーンの顔だった。時事チェックのしすぎ。ここで終わった。あとは「漢字4文字」と聞いてもどういうわけか「renaissance」というスペルだけが浮かび、4文字に省略したらどうなるんだろうとかわけのわからないことを考えてしまった。結局10問正解。これはパーフェクトを取れた問題である。正直、負けた、と思った。よもや、私がみんなの足を引っ張ることになろうとは。ああ…。
 だが、天はまだ我々を見放してはいなかった。決勝の対戦相手、九州の川渕くんも正解数は10問。相手の不正解を望む展開は情けないなと思いつつ、2問めの不正解には「やった」と思ってしまった。情けないけど仕方ない。ただ、最後のユーロの問題をためにためた末に正解されてしまい、同点決勝に。あちゃ。
 チームメイトはあまり早押しに不安を持っていなかったようだが、私は大いに不安だった。ただ、決勝はお手つき合戦になるかもしれないなとは漠然と思った。ふたを開けるとお手つき「合戦」とはならず、相手が一方的にお手つきを繰り返した。予想外の大差で我々の勝利。最後の解答者となった私は、不覚にもカメラの前でガッツポーズなどしてしまった(いつもはしないことにしている)。はからずも、気合が入っていたんだなと思った。それに、団体戦の優勝は思いのほかうれしい。この点は強調したい。
 さて、準決勝の早押しには必要以上の苦戦を強いられたわけだが、あとから考えるに、苦戦の原因は事前に私が考えた「手が遅い」という要因とは違っていた。それは決勝の同点決勝でもわかる。我々に欠けていたのは、新趣向のクイズに対する順応性だった。我々は物事を理解するのが総じて遅かったような気がする。年齢はこんなところに現れるのかもしれない。
 さて、残すは賞金をかけたタイムショック。ここでまた意外な心理状態に陥った。心の中で目標が何もなくなってしまっていたのである。もちろん、私の正解数によって賞金の額が決まる。なのに、緊張感も何も起こらなかったのである。「また挑戦できてうれしい」。それ以外、何も思わなかったのだ。結局、賞金挑戦クイズも10問正解にとどまった。これもパーフェクトを取れた問題である。知識、集中力、いずれも欠けていた。完敗だ。
 かくして、私の(我々の)タイムショック挑戦は終わった。形の上では勝利だが、個人的には惨敗の気分。まだまだ青いな。リベンジできるならぜひさせていただきたい。でも、衣装は違うのがいいな。
 ともあれ、我々は勝負の場に立った。チームとしては勝った。これは本当にうれしい。こればかりは実際に体験しないとわからないと思う。チームプレイ大キライの私でもこんなに楽しめるのだから、今まで出場したほとんどの人が楽しんだんじゃないかな。まだ挑戦していない人にも出場をぜひ勧めようっと。