あらためて勝つことの難しさを実感
(10キロのダイエットに成功した姿をブラウン管に残した)
西沢泰生

最初に嶋田君から「ホノルルクラブチームで出場しませんか?」と誘われた時、元来、チーム戦を嫌うこともあり、正直断ろうかとも思った。しかし、せっかくのチャンスなので、これを機に最近なまっているクイズの腕をリハビリしてみようという気になった(失礼!)。もし、このメンバーで予選に合格する(させてもらえる)とすれば、当然、本番はガチンコのクイズ王大会。とりあえずは現役時代に戻って仕上げていかなければならないと思った。
 予選の日が決まり、昔作った基礎問題ノートをさらってみたら、忘れてる忘れてる。まさにリハビリ。時事問題もまじめにチェック。そして、最大の難関、最近の芸能界も歌番組を見まくってなんとかわかるようにした(こればっかりはランキングを紙で覚えるだけではぜんぜんだめ、やっぱり歌を聴いて歌手を目で見るのが基本)。
 予選は無事合格。ゴールデンタイムなのでもっと威張ったスタッフかと思ったらフランクな人たちで好印象。昔のクイズ番組の話なんかすると「観てました」とか「知らない」とか乗ってくる。どうも、スタッフの人たち自身、クイズが好きな感じがした(態度のデカイスタッフもいたんだ昔は。あっウルトラのスタッフじゃないよ。あの人たちはプロ中のプロでした)。
 当初はテーマ問題選択コーナーがあると思っていたので、プロフィールに得意分野と書いた「映画」のおさらいをしている最中に、改訂後のルールが届いた。なんと全員の早押しがあるという。息をするように早押しをやってきて、今さら「手を早くする」もないのだが、ビデオの一時停止で過去のクイズ番組を見ることも始めた。
 そうこうするうち本番。CSを除けば実に久しぶりのテレビ出演だ(まさかアロハシャツで出るとは思わなかったが…)。

 50問の筆記でトップだったのは正直うれしかった(あの前振りで出て2位だったらかっこ悪いもんね)。しかし、最初の挑戦者の全問正解にはマジでビビッた。この空気、この流れをどうやってうちのチームに持ってくるか…。6問正解のチームが出て、うちは鷹羽君なので120%安心。だが、まだスタジオの空気は異様なままだ。そりゃそうです。10問取ったうちが最下位での通過ですから。今日は少しでもスキを見せたら勝てないと思った。
 早押しボタンは5人だと(私は)やけに押しにくかった。小林一茶の問題なんか「なんでうちが点かないの」と思ったくらい。あにはからんや1対3の大ピンチ。この時はもう必死で念力送ってました。石野、水野両氏が抜け、残ったのは嶋田君1人。実は私は前々から嶋田君は引きの強さを持つプレーヤーだと思っていたので、内心、彼が最後の一人でよかったと思っていた。
 そしてあの一問。あのワシントンの問題はたぶん、私も同じところで押して同じように答えていたと思う。嶋田君を弁護すると、目で見る問題はあの時点ではまだ一度もオン・エアされていなかった。もし、テレビで一度でも見ていたら、彼も正解を出していたでしょう。ブザーの瞬間は負けたと思ったが、奇跡を信じて「間違えろー!」と心の中で絶叫(ひどいやつだよあたしゃ)。間違えた瞬間はガッツポーズまでしてしまったと思う(よく覚えていない)。でも、これは本当に奇跡だと思う。
 この瞬間、スタジオの空気がやっとうちのチームの「勝ち」に変わった(と感じた)。勝利の女神がやっとこっちを向いてくれたのだ。この空気になるまでのなんと道の険しかったことか。嶋田君が抜けて、金星を落とした敗者の涙。勝負の厳しさと勝ちを引き寄せることの難しさを改めて思った。香川チームの皆さん、あなたたちの果敢な戦いぶりは忘れません。本当にいいチームだったと思います。これからも仲間を大切に。

 決勝は石野なので安心していた。10問以下はまずないプレーヤーなので…(実は内心、1回戦で石野を温存したことも早押しを抜けられた要因の一つと考えている。だって、石野があのイスに座らないまま終わるような引きの弱いプレーヤーのわけがないので…)。さて、石野の結果は10問。1問目を間違えてもまったく動じず、連続正解するところも、スタッフが必死で考えたであろう難問奇問をことごとく正解しておきながら比較的簡単な問題を落とすところも実に石野らしい。勝負の流れから相手が11問正解することはあり得ないと勝手に考えていたが、同点決勝はあると思った。横で死にかけていた(笑)嶋田君にも、テンションを上げるよう伝える。結果は思ったとおり同点。よっしゃ、もう一仕事ですね。まさに「道険し」。
 わがチームもだてに29勝はあげていない。「勝ち」に入った時は強い。前の早押しで疲れ切った2人が早々に抜けた。うちは石野、鷹羽の2名が残れば100%勝ちだ。「そうか、次の問題で私が抜ければ勝ちじゃん」と真剣に思った。人数が減ってボタンも押しやすくなった。久しぶりに集中力全開。「北野たけしの監督作品で」何が来てもいけると思いここでボタンを押した("読ませ押し"ってやつですね)。「あの夏…」が聞こえた。なんだ、大好きな作品だ。私が抜けて勝負ありだった。

 とにかくホノルルの名を出して、このメンバーで出るからにはぜったいに負けたくなかった(大嫌いなチーム戦なので特に)。勝てて心底ほっとした。しかし、勝負はあきらめた瞬間に負けが決まるんですね。今回の勝因はあきらめなかったことに尽きると思う。これから出場される皆さんも、どんな状況でも、あきらめずに頑張ってください。一番準備して、あきらめなかったチームに女神は微笑みます。